この記事では「SDGs報告2020 17の目標ごとの進捗状況 日本語版(国際連合センター)」をもとにSDGsの17の目標を説明しています。この資料を読み解くことで各目標ごとの達成状況や課題の理解につながります。
国際連合センター「SDGs報告2020 17の目標ごとの進捗状況 日本語版」は下記のリンクから閲覧することができます。インフォグラフィックが使用されていて理解しやすい資料です。
目標1. 貧困をなくそう
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・全世界で2030年までに貧困をなくすのは厳しい状況
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・コロナの影響により世界の貧困がこの数十年で初めて増加
その他
・若年労働者が貧困に陥る確率は成人労働者の2倍(2019年)
・40億人がいかなる形の社会保障も受けられていない(2016年時点)
・自然災害で貧困はさらに悪化。
目標2. 飢餓をゼロに
飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を促進する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・中程度または深刻な食料不安を抱える人口の割合25.9%(2019年)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・コロナ禍は、食料システムに対する新たな脅威に
・小規模食料生産者(開発途上地域の食料生産者全体の40-85%)はコロナ危機によって大きな打撃
その他
・子どもの発育不良と消耗性実感は悪化する可能性が高い。(発育不良の5歳児未満の割合は21.3% 1億4,400万人)
目標3. 全ての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・多くの保健分野で前進しているが加速が必要。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・医療の混乱により数十年間の進歩が逆戻りする危険性。
・コロナ禍によりおよそ70か国で子どもの予防接種プログラムが中断。
・サハラ以南アフリカでは医療サービスの中止によりマラリアの死者が100%増大する見込み。
その他
・必須医療サービスを受けているのは世界人口の半分未満(2017年)
目標4. 質の高い教育をみんなに
すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・2030年になっても学校に通えない子どもは2億人以上と見込まれる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・休校により90%の児童等は学校に通えなかった。
その他
・少なくとも5億人の児童等はオンライン学習を受けられる学習環境になく、教育の不平等は新型コロナウイルスの影響によりさらに拡大した。
目標5. ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・改善は見られるが目標達成にはまだまだ遠い。
・女性が国会議員に占める割合は25%(2020年)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・都市封鎖により女性に対する家庭内暴力のリスクが増大している。
その他
・コロナ禍で女性の家事に対する負担は増大
目標6. 安全な水とトイレを世界中に
すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・改善しているものの、数十億人は未だ安全な水及び衛生サービスが受けられていない。
・22億人は安全な飲料水を利用できず、42億人は安全に管理された衛生施設を利用できていない。(2017年)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・全世界で30億人が手洗い設備を自宅に持っていない。
その他
・水不足により2030年までに7億人が住む場所を追われるおそれ
目標7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネ ルギーへのアクセスを確保する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・7億8,900万人が電力を利用できていない状況。(2018年)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・開発途上国では医療施設4か所のうち1か所に電気が通じていない国も
その他
・エネルギー消費率全体に占める再生可能エネルギーは17%(2017年)
目標8. 働きがいも 経済成長も
すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・2010-2018年の1人当たりGDP成長率は2.0%だったが2019年には1.5%と世界経済の成長は減速。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・コロナ禍でインフォーマル経済で働く16億人が生計手段を失う恐れ
・観光業は大打撃を受け、2020年に外国人観光客は8億~10億人ほど減少する恐れ
・2020年は1人当たりGDPが4.2%マイナスになる恐れ
目標9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・製造業の成長率は低下傾向(関税と貿易摩擦が要因の1つ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・航空機利用者数は前年同期比で51%減少(2020年1月~5月の期間)
その他
・後発開発途上国でインターネットを利用できるのは5人に1人未満(2019年)
目標10. 人や国の不平等をなくそう
国内および国家間の格差を是正する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・所得の不平等が一部縮小(84ヶ国中で38ヵ国がジニ係数が低下)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・コロナ禍による影響は立場の弱い人々に集中している。
その他
・開発途上国への援助が減少する懸念あり
目標11. 住み続けられるまちづくりを
都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・都市圏域に居住するもののうちスラムで暮らす割合が24%までに上昇(2018年)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・新型コロナウイルスの感染者の90%以上は都市部で発生している。
その他
・大気汚染による健康被害で420万人が寿命を縮める危険性。(2016年)
目標12. つくる責任 つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・2017年の全世界のマテリアルフットプリント※は859億トンであり、天然資源を持続可能な形で利用できていない。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・コロナ禍により持続可能な復興計画を策定する機会となった。
その他
・電子機器等の廃棄物は38%増加するも、リサイクル率は20%未満(2010-2019年)
マテリアルフットプリントとは「国内最終需要を満たすために消費された天然資源量」を示します。
似たような言葉に「エコロジカルフットプリント」があります。これは人類が地球環境に与えている負荷を測る指標です。WWFジャパンでは『地球1個分の暮らしの指標 ~一目でわかるエコロジカル・フットプリント』という小冊子(PDF)を発行しています。下記のサイトから閲覧できますので、理解を深めるたい方は閲覧してみるとよいかと思います。
目標13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・現状では2100年までに地球の気温は最大3.2℃上昇する危険性がある。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・新型コロナウイルスにより温室効果ガス排出量は6%減少する(2020年)
その他
・気候変動により自然災害の頻度と深刻度がより悪化し被災者数も増えている。(2018年)
目標14. 海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・海洋酸性度は2100年までに100~150%高まり海洋生物に悪影響を与える危険性
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・人間の活動の減少により海洋の状況が回復する可能性も
その他
・全世界で海洋生物多様性地域の保護区に指定される割合は上昇中
目標15. 陸の豊かさも守ろう
陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・生物多様性損失は拡大傾向。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・野生動物の違法取引により感染症の蔓延が助長されている。
その他
・農地の拡大により森林面積は減少している。
目標16. 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・毎日100人の民間人が武力紛争で死亡。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・60%の国で、刑務所が過密状況であり新型コロナウイルスの感染危険性が高い。
その他
・全世界の殺人率は緩やかに減少している
目標17. パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・ODA総額はほぼ横ばい。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・低・中所得国への送金が減少する可能性。
その他
・固定ブロードバンドの回線加入者は開発途上国は11.2%、先進国は33.6%(2019年)
誰一人取り残さない ~leave no one behind~
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前
・子どもに対する多様な形態の暴力はゼロにできていない。人身取引の被害者となる割合も高い。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
・子どもと若者の福祉にコロナ危機の影響、80代の高齢者がコロナウイルスの影響で命を落とす可能性は平均の約5倍。
その他
・障がい者の10人中3人は何らかの差別を経験。(2014~2019年)
「SDGs報告2020 17の目標ごとの進捗状況」を元に、SDGsの進捗状況を整理させていただきましたが、記載されているとおり、改善した項目が新型コロナウイルスの影響により後戻りする等の悪化が見られている項目がありました。このように深刻な社会変動が起きてしまうと、残念ながら社会的に立場の弱い人たちにしわ寄せがいく結果になります。セーフティネットの整備等により、立場の弱い人たちへの悪影響が抑えられるようなシステムの構築が望まれます。